労働トラブルは防げるのか?データが語る職場の課題とこれから

厚生労働省は、「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。本制度は、労働者と事業主の間で発生するトラブルを未然に防ぎ、迅速に解決することを目的としています。

 

1. 総合労働相談とは?

総合労働相談とは、労働局や労働基準監督署などに設置された相談窓口で、労働問題に関するあらゆる相談にワンストップで対応する制度です。労働者だけでなく、事業主も利用可能で、法制度の説明や具体的な解決策の提示が行われます。労務トラブルを未然に防ぐ手段として活用することが重要です。また、必要に応じて「助言・指導」や「あっせん」などの手続きを案内されることもあります。

 

2. 総合労働相談件数は高止まり

令和5年度の総合労働相談件数は、121万412件となり、4年連続で120万件を超える高水準を維持しました。特に、「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」などの相談が多く寄せられています。

 

3. いじめ・嫌がらせの相談が最多

民事上の個別労働関係紛争に関する相談の中で、「いじめ・嫌がらせ」が最多となっています。ただし、令和4年度の労働施策総合推進法の改正により、パワーハラスメント関連の相談は別途集計されるようになったため、前年度比では14.0%減少しています。

主要な相談内容(件数)

  • いじめ・嫌がらせ:60,125件(前年より減少)

  • 自己都合退職:42,472件

  • 解雇:32,944件(前年より増加)

  • 労働条件の引下げ:30,234件(前年より増加)

4. 助言・指導、あっせんの申請が増加

都道府県労働局長による「助言・指導」の申出件数は8,372件(前年比5.7%増)、紛争調整委員会による「あっせん」の申請件数は3,687件(前年比6.3%増)と増加傾向にあります。特に「労働条件の引下げ」に関する助言・指導は、28.2%増加し最多となっています。

 

5. 具体的な解決事例

事例1:労働条件の引下げ

有期雇用の短時間労働者が、一方的に勤務時間を減らされ、生活が困窮したケース。労働局の助言を受け、事業主と話し合いの場を設けた結果、他店舗での勤務を追加する形で労働時間の確保が実現。労働条件の変更は慎重に行い、事前の説明と同意を徹底することが重要です。

事例2:いじめ・嫌がらせ

同僚からの嫌がらせを受け、体調を崩した労働者が自主退職。慰謝料200万円を請求し、あっせんを申請。事業主側は解決金20万円を支払うことで合意。ハラスメント対策を強化し、相談窓口の整備を進めることでリスクを回避することが求められます。

事例3:解雇トラブル

試用期間満了を理由に解雇されたが、合理的な理由がなく、助言・指導を求めた結果、解雇は撤回され、別の部署での継続雇用が決定。解雇に際して客観的な理由を明確にし、法的リスクを最小限に抑えるための準備を怠らないことが重要です。

 

6. まとめ

近年、労働トラブルの相談件数は高止まりしており、「いじめ・嫌がらせ」や「労働条件の引下げ」などの問題が深刻化しています。労働環境の適正な管理とトラブルの未然防止が不可欠です。

意識すべきポイント

  • 労働契約の変更は慎重に行い、適正な手続きを確保する。

  • ハラスメント対策を強化し、社内の相談体制を整備する。

  • 解雇を行う際は、合理的な理由と法的手続きを明確にする。

  • 労働問題が発生した場合は、速やかに専門家へ相談する。

つばさ社会保険労務士事務所では、労働問題に関するサポートを行っております。ご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。