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研修医は「労働者」か? 最高裁判例から考える

はじめに

近年、医療現場における研修医の労働環境が問題視されています。本記事では、研修医が「労働者」として認められた最高裁判例(関西医科大学研修医事件)を取り上げ、社労士の視点からその意義や企業・病院が取るべき対策について考察します。

 

1. 判例の概要(関西医科大学研修医事件)

本件は、関西医科大学の研修医が労働基準法および最低賃金法上の「労働者」に該当するかどうかが争われた事案です。事案の概要は以下の通りです。

  • 研修医は医師免許を取得後、病院で臨床研修を受けていた。

  • 研修期間中、病院は「奨学金等」として一定の金員を支給していたが、最低賃金を下回っていた。

  • 研修医の遺族が、病院に対して未払い賃金の支払いを求めた。

2. 研修医の父親による調査と発覚

  • 1998年8月下旬に病院側に勤務実態を問い合わせると、「研修時間は研修医の自主管理であり、病院に責任はない。支払っているのは給与ではなく奨学金であり、雇用関係には当たらない」と説明された。

3. 最高裁の判断

最高裁は以下の理由から、研修医は労働基準法および最低賃金法上の「労働者」に該当すると判断しました。

  • 病院の指揮監督のもとで医療行為に従事していた。

  • 「奨学金等」として支払われた金銭は実質的に給与に該当し、源泉徴収が行われていた。

  • そのため、病院には最低賃金額を支払う義務があるとされた。

4. 社労士の視点から見るポイント

今回の判例から、企業や病院が注意すべきポイントを整理します。

労働基準法上の「労働者」の判断基準

  • 指揮命令関係の有無

  • 報酬の支払い方法(奨学金・謝礼でも給与に該当する可能性あり)

  • 業務の実態(業務遂行の義務があるか)

5. まとめ

  • 「研修」「教育的な側面」があっても、実態が「労働」であれば労働者と認定される。

  • 企業・病院は適切な契約形態を確認し、労務管理を行う必要がある。

  • 社労士の専門知識を活用し、適切な雇用管理を行うことが重要。

 

今回の判例(関西医科大学研修医事件)は、研修医のみならず、さまざまな業界の研修・インターン制度にも影響を与える可能性があります。企業や病院は、今一度、自社の研修制度を見直し、適切な労働環境を整えることが求められます。

 

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