
社会保険労務士として日々の業務の中で、労働時間に関する相談を受けることが多々あります。特に、「どこからどこまでが労働時間なのか」という問題は、企業側・労働者側双方にとって非常に重要なテーマです。
今回は、労働基準法における労働時間の考え方と、判例から学ぶポイントについて解説します。
1. 労働基準法における労働時間とは?
労働基準法第32条では、労働時間の上限が定められていますが、そもそも「労働時間」とは何を指すのでしょうか?
判例によると、労働時間とは**「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」**を指します。これは、単に契約や就業規則の定めによるものではなく、実態として使用者の指示に従って業務を行っているかどうかで判断されるものです。
2. 具体的な判例の考え方(三菱重工長崎造船所事件)
「三菱重工長崎造船所事件」として知られる判例では、以下のような行為が労働時間に該当すると認められました。
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作業開始前に行う更衣・保護具の装着
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副資材の準備や散水作業
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退勤時の更衣や片付け作業
これらは、使用者が義務付けていたり、実態として業務に不可欠であると認められる場合、労働時間と判断される傾向にあります。
例えば、企業が「始業前に作業着を着て、準備運動をしてから仕事に入るように」と指示していた場合、その時間は労働時間に含まれる可能性が高いです。
3. 企業に求められる対応
このような判例を踏まえると、企業側としては以下の点に注意が必要です。
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労働時間の適正な管理
更衣や準備時間など、実際に業務に必要な時間を考慮し、適切な労働時間管理を行う。 -
賃金未払いのリスク回避
「業務の一環として必要な準備作業」がある場合は、それに対して適正な賃金を支払う必要がある。 -
就業規則や労働契約の見直し
ルールを明確にし、労働者との認識のズレを防ぐことが重要。
4. 労働者側のポイント
労働者としても、「自分の行っている作業が労働時間に該当するのか?」を理解しておくことが重要です。
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業務指示が明確にあるか?
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その作業が業務遂行上、必要不可欠なものか?
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会社のルールがどうなっているか?
これらを確認し、労働時間として認められるべきものが適切に扱われているかどうか、チェックすることが大切です。
まとめ
労働時間は単に契約や就業規則だけで決まるものではなく、実態として「使用者の指揮命令下にあるかどうか」がポイントになります。
企業も労働者も、お互いに適正な労働環境を整えるため、労働時間の考え方を理解し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
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