若者は損をしてる?そう感じる年金制度の“伝え方”に足りなかったもの
最近SNSなどで話題になった、厚生労働省の年金制度に関する若者向け説明文。
こんな一文があって、ちょっとしたざわつきを生みました。
経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません。
…正直なところ、この言い方、ちょっと上から目線に聞こえませんか?
「払ってるのに返ってこないかもって思ってるのに、損得で見るなって言われてもなあ…」
そんなモヤモヤを抱いた人も多かったようです。
本当は大事なことを伝えようとしていた…でも「伝え方」が下手だった?
厚労省が若者向けに発信している「あなたと年金」というページには、こう書かれています:
公的年金制度は社会保障の一種で、高齢・障害・死亡など誰にでも起こり得るリスクに社会全体で備え、皆さんに『安心』を提供するものです。
そのため、経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません。
言いたいことはわかります。「老後にお金をもらう制度」とだけ思われがちだけど、本当は“もしも”に備える保険のような制度なんだよ、という話なんですよね。
でも、ちょっと言葉の選び方が固すぎた。
もっとこう、フラットなトーンで「年金って実はこんなに支えになってるんですよ」って伝えられていたら、ここまで反発されることもなかったんじゃないかな…というのが率直な感想です。
年金は「老後」だけじゃない。もしものときの支えにもなる
実は公的年金制度には、以下の3つの役割があります:
-
老齢年金:老後の生活を支える
-
障害年金:病気や事故で働けなくなったときの備え
-
遺族年金:家族を支える人が亡くなったときの支え
● 障害年金 ── 働けなくなったときの生活を守る
事故や病気で、これまで通り働けなくなってしまったら?
障害年金は、そんなときに支給される「生活支援の年金」です。
ざっくり金額イメージ(令和6年度)
-
障害基礎年金(2級):816,000円/年(約68,000円/月)
-
障害基礎年金(1級):1,020,000円/年(約85,000円/月)
-
子ども加算:
-
第1子・第2子:各234,800円/年
-
第3子以降:各78,300円/年
-
📝たとえば、子ども2人がいる場合の障害等級2級なら:
👉 合計:1,285,600円/年(約107,000円/月)+厚生年金部分(ある場合)
● 遺族年金 ── 一家の柱を失ったときに支えてくれる
もし一家の大黒柱が亡くなったら──?
残された配偶者や子どもが、生活に困らないように支給されるのが「遺族年金」です。
ざっくり金額イメージ(令和6年度)
-
遺族基礎年金(配偶者が受給):816,000円/年
-
子ども加算:
-
第1子・第2子:各234,800円/年
-
第3子以降:各78,300円/年
-
📝子ども2人がいる場合の合計:
👉 1,285,600円/年(約107,000円/月)+遺族厚生年金(会社員など)
「もらえるか不安」は当然。でも、確かに全部が“損か得か”では測れないと思う。
正直、今の若い世代が「自分のときにちゃんともらえるの?」と不安になるのは自然なことです。
将来の見通しが立たないなかで、「損得で見るな」と言われたら、ムッとする気持ちもよくわかります。
でも一方で、年金制度は長生き、障害、死亡といったリスクに備える“保険”としての意味があり、ただの積立制度ではありません。
支え合いの仕組みとして、「自分もいつか助けられる側になるかもしれない」──そんな視点も、ちょっとだけ持ってもいいかもしれません。
まとめ:伝えたいことは悪くなかった。でも伝え方が“惜しかった”
厚労省の広報、言いたいことは悪くないんです。
「年金=老後」だけじゃないよ、「もしものときにも支えてくれる制度だよ」という大事なことを伝えようとしていた。
だけど…
もう少し言葉を選んでくれてたら、もっと響いたのに…!
そんな“惜しさ”が、今回のざわつきの本質だったのかもしれません。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由