
近年、スポットワーク(短時間・単発の仕事)という新しい働き方が急速に広がっています。
スマホアプリで簡単に応募できることから、学生や副業層、フリーランスなど、さまざまな世代が利用していますが、その実態には多くの課題があることが明らかになってきました。
ちなみに、私自身も学生時代に単発バイトに申し込んだことがあります。
那覇の港町で荷物をひたすら運ぶという力仕事で、開始5分で「これは続かないな…」と実感。
その日きりで辞めてしまった、今となってはいい思い出です(笑)。
こうした「ちょっと働いて、すぐ終わる」スタイルが魅力の反面、現場ではいろんな“ズレ”や“トラブルの種”も潜んでいるのだと、今ならよくわかります。
📈 スポットワークの拡大とその背景
財務省の広報誌「ファイナンス」(2024年12月号)では、スポットワークについて次のように整理されています。
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スポットワークの定義:数時間~数日間の短期的な雇用契約
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市場拡大の背景:企業の人手不足、多様な働き方ニーズの高まり
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労働者のメリット:時間や場所に縛られず、すぐに働ける柔軟性
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企業のメリット:欠員補充や繁忙期対応に柔軟な人材確保が可能
一方で、こうした柔軟な働き方の普及に伴い、労務管理上の”盲点”も浮き彫りになっています。
📊 連合「スポットワークに関する調査2025」で判明した実態
2024年12月に日本労働組合総連合会が実施した調査によると、スポットワーカー(短時間・単発の仕事経験者)から次のような実態が報告されています。
🔹 説明不足が常態化
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業務内容の説明を全く受けていない人:24.5%
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労働条件の説明を受けていない経験あり:54.3%
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事故防止の説明なし:65.5%
🔹 労働条件通知書が交付されないケースが多数
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すべての就業先で交付された:30.9%
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交付されなかった、もしくは不明:45%以上
🔹 トラブル経験者は約半数(46.8%)
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「求人情報と仕事内容が違った」(19.2%)
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「業務指示・教育が不十分」(17.7%)
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「労働条件が違った」「急な仕事取消し」「賃金トラブル」なども多数
⚠️ なぜ問題なのか?企業が直面するリスク
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労働条件通知書の未交付は労働基準法第15条違反に該当
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安全衛生説明の未実施は労災時の企業責任リスクを高める
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トラブルによる口コミやSNSでの拡散で企業イメージの毀損にも
💡 社労士からのアドバイス:最低限押さえたいポイント
✅ 労働条件通知書は必ず交付を
「単発」「短期」でも雇用契約である以上、書面または電子交付が必要です。
✅ 説明は“短く・わかりやすく”
要点だけでも事前に伝える工夫が必要です。
✅ 安全衛生教育は一言でも
「滑りやすい床に注意」「重たいものは無理に持たないでください」といった一言でも大きな違いがあります。
✅ 契約形態は明確に伝える
雇用契約か業務委託かで義務や責任が異なるため、労働者にもはっきりと伝えましょう。
📝 まとめ:スポットワーク時代でも“働く人”への配慮を忘れずに
スポットワークは、企業にも働く人にも新たな可能性をもたらす働き方です。
しかし、その柔軟さに甘えて基本的な労務管理を怠ると、トラブルや法的責任に直結します。
雇用形態の多様化が進む今だからこそ、「短期だからこそ丁寧に」が求められています。
📣 当事務所では、スポットワークや非正規雇用に対応した労務管理のアドバイス・書類整備サポートを行っています。
労働条件通知書、安全衛生の簡易マニュアル、契約書の確認など、気になることがあればお気軽にご相談ください。
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このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由