
2025年3月、沖縄県の職員2名がパワーハラスメントや暴力行為を理由に懲戒処分を受けたというニュースが報じられました。
カラオケ店での暴力や、公の場での侮辱的な発言。一見、「軽い冗談」や「よくある飲み会の出来事」に見えるこれらの行為も、場合によってはハラスメントとして重大な問題になります。
職場での言動が「指導」と「パワハラ」のどちらに該当するのか、見極めるのは簡単ではありません。しかし、その違いを曖昧にしたままでは、職場の安心・安全な環境づくりはできません。
今回は、実際の処分事例を踏まえながら、パワハラの定義と判断基準、そして組織としてどのように予防・対応していくべきかを解説します。
沖縄県職員の懲戒処分事例
沖縄県は2025年3月、以下のような行為を理由に職員2名を処分しました。
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40代男性職員
県の関係団体職員3名に対し、他の職員の前で侮辱的な発言を行い、「戒告(厳重注意)」の処分。 -
50代男性職員
那覇市内のカラオケ店で、同席していた職員の頭部にマイクをぶつける行為を行い、「減給1カ月(10分の1)」の処分。
いずれも、行為の内容や場面から見て、職場のパワーハラスメントに該当するケースです。
職場のパワーハラスメントとは?
厚生労働省は、職場のパワハラを以下の3要素すべてを満たすものと定義しています。
① 優越的な関係を背景とした言動
・上司から部下だけでなく、知識や経験の優位性を利用した言動も該当。
・今回のケースでは、立場の違いがある中での侮辱発言・暴力行為であり、当てはまる可能性が高いといえます。
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
・業務目的を逸脱した発言や態度、身体的攻撃は明確にアウト。
・カラオケ店での暴力や、業務と関係のない侮辱発言は、必要性や相当性を明らかに欠いています。
③ 就業環境が害される
・精神的・身体的な苦痛により、働く上での支障が生じた場合もパワハラに該当します。
・受け手の感じ方や、平均的な労働者の視点で判断されます。
職場の定義にも注意が必要
「職場」はオフィスだけに限られません。以下のような場面でも、職場に該当する可能性があります。
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出張先
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業務に関連した懇親会(飲み会やカラオケなど)
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社員寮や車中
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接待の席
今回のカラオケ店での行為も、業務に関連する場面であれば「職場」として扱われる可能性が高く、勤務時間外であってもハラスメントと認定されることがあります。
企業や組織が行うべきパワハラ防止策
✅ 社内制度の整備
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パワハラの定義や禁止事項を就業規則に明記
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相談窓口の設置と対応フローの明文化
✅ 管理職・従業員向けの研修
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適切な指導とパワハラの違いを理解する
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ハラスメントを未然に防ぐ職場の雰囲気づくり
✅ 外部専門家の活用
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社労士などを通じた制度見直しや研修企画
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第三者視点での対応・相談サポート
📺動画で学ぶ「これってパワハラ?」
職場でのハラスメントに迷ったときは、厚生労働省の動画ポータルサイトも活用できます。
【検索できる主な項目】
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パワハラ6類型の解説
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適切な指導とは何か?
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相談窓口対応のポイント
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セクハラ、マタハラ・パタハラ、カスタマーハラスメント
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就活ハラスメント
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VR動画でリアルに体験できるコンテンツも!
社内研修にも活用可能(申請不要・出典明記でOK)です。
動画で視覚的に学ぶことで、理解も深まります。
✅ まとめ:知識と仕組みが、ハラスメントのない職場をつくる
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パワハラは「優越性・不適切な言動・環境悪化」の3つで判断される
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上司だけでなく同僚・部下からの行為も対象になり得る
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職場の定義は広く、懇親の場や出張先も含まれる可能性がある
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組織としての制度整備・研修・相談体制の構築が必要不可欠
つばさ社会保険労務士事務所では、ハラスメント防止のための制度設計、就業規則の見直しなど幅広くサポートいたします。
お気軽にご相談ください。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由