
こんにちは。沖縄の社会保険労務士・玉城翼です。
4月、出会いと別れの季節ですね。
会社を辞めたあと、意外と悩むのが「健康保険をどうするか?」という問題です。
任意継続と国民健康保険(国保)、どちらに入るかで保険料が大きく変わることもあります。
「退職したばかりで、まだ収入がないのに保険料が高い…」
「どっちが安くなるのかよく分からない」
そんな声も多く聞きます。
この記事では、実際に比較してわかったポイントや、制度の仕組み、注意点、判断のコツを社会保険労務士の視点からわかりやすく解説していきます。
🔰 退職後は何らかの健康保険の加入が必須!
会社を退職すると、勤務先の健康保険(協会けんぽや組合健保)は自動で喪失します。
そのため、次のいずれかの方法で自分で健康保険に加入し直す必要があります。
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任意継続被保険者(協会けんぽ)
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国民健康保険(国保)
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ご家族の扶養に入る(被扶養者)
📌 【実体験】国保の保険料が任意継続の約1.8倍だった!
退職後に任意継続と国保、両方の保険料を見積もってみたところ…
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国保のほうが、任意継続の約1.8倍の金額で驚きました!
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理由はいくつかありますが、一番大きいのは「所得の捉え方の違い」と「扶養制度の有無」です。
📊 任意継続と国保の違いまとめ
違いがわかりやすいように、以下に比較表でまとめました。
比較ポイント | 任意継続 | 国民健康保険(国保) |
---|---|---|
保険料の基準 | 退職時の標準報酬月額 | 前年の世帯全体の所得 |
所得の対象 | 給与のみ | 給与+副業+不動産など |
保険の単位 | 個人ベース | 世帯単位 |
扶養制度 | あり(家族を入れても保険料は1人分) | なし(家族全員が課税対象) |
保険料の変動 | 2年間ほぼ固定 | 毎年変動あり |
減免制度 | なし | あり(条件付き) |
✅国保には「扶養制度」がない=家族が多いと保険料が跳ね上がる!
ここが実は大きな違い。
協会けんぽ(任意継続)には「扶養」という考え方があり、家族を扶養に入れても保険料は増えません(1人分でOK)。
一方、国保には扶養制度がないので、配偶者や子どもなど一人ひとりが保険料の対象になります。
つまり…
家族が多ければ多いほど、国保の保険料はどんどん上がる!
これ、実際に保険料を見てみて初めて気づく人が多いです。
✅ 副業や不動産収入がある人は要注意!
国保では、会社の給料以外の収入も含めて保険料が計算されます。
だから副業や不動産、年金収入などがある人は、「もらっていた給与収入のわりに保険料が高い…」という事態になることも。
💡 国保の「減免制度」もチェック!
厚生労働省の公式情報によると、国保には特定の離職理由(倒産・解雇・雇止め等)に該当する場合の保険料軽減措置があります。
該当者は、前年の給与所得を圧縮して保険料を再計算できるため、任意継続よりも保険料が安くなるケースもあります。
🛡️ 「とりあえず任意継続に入っておく」という戦略
退職後すぐは、病院に行くこともありえますよね。
でも健康保険に入っていないと、全額自己負担で医療費を支払うことになります。
しかも任意継続資格は退職日の翌日から20日以内に申し出しないといけないことになっています(シビア・・・)。
そこで個人的におすすめなのが…
✅ まず任意継続に入っておく(1~2カ月)
✅ その間に国保の保険料見積もりを役所で確認する
✅ 最終的にどちらかに決める
🕒 タイミングに注意!「同月得喪」は還付対象外
任意継続から国保へすぐ切り替える場合、同じ月内に資格取得と喪失があると、任意継続の保険料は返金されません。
これを「同月得喪(どうげつとくそう)」といいます。
「あとで切り替えよう」と思ったときは、月をまたぐかどうかにも注意しましょう!
📅 役所での見積もりは4月中旬がベストタイミング
国保の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。
そのため、役所によりますが4月中旬以降であれば正確な6月以降の保険料が出やすくなります。
ただし、まだ反映されていない場合でも、
・ 所得のおおよその額を伝えれば、
・ 担当者が「このぐらいになりそうです」と見積もってくれることも!
✅ まとめ:退職後の健康保険は「比較+段取り」が命!
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保険料は人によって大きく違う
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副業・家族の人数によって国保が高額になることも
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任意継続には扶養制度がある=家族が多い人には有利
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とりあえず任意継続に入って、国保の見積もりを確認するのがおすすめ
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同月得喪に注意!切り替えタイミングは慎重に
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由